心霊スポット
商社で働く省吾さんという男性から聞いた話。 省吾さんが大学三年生の時のこと、ほとんどの単位を取り終わった彼は、同じく 授業の無い友人二人と共に毎日遊びまわっていた。といっても、少ないバイト代でできることは限られており、大抵は誰かの家で呑みながら夜通しゲームをするのがいつもの流れだった。初めこそはそんな遊びも楽しかったのだが、さすがに三ヵ月もすれば飽きてしまい、他の遊びを模索し始めた。ちょうど初夏のころで、テレビでは心霊特番のCMが流れていた。それを見て誰が言いだしたのか、三人はドライブがてら心霊スポットへ行くことになった。行き先はネットで検索して、同じ県内にある「魔女の家」と書かれた心霊スポットに決めた。 さっそくその日の夜に省吾さんが車を出して、心霊スポットへと向かった。一番近くにしたのだが、それでも車で四十分ほどかかる距離だったそうだ。やがて三人を乗せた車は、市街地から離れた一軒の廃屋に到着した。家は荒れ果てており、道と敷地の境目が分からない程に草が生い茂っていた。魔女の家という名前の割には、ずいぶん古風な日本家屋だと省吾さんは思った。また、荒廃してはいるが、マイナーな場所だからか、心霊スポットにありがちな不良の落書きや、人が入った形跡などは見られなかった。 玄関に手をかけると鍵はかかっておらず、あっさりと中に入ることができた。玄関から順に、台所、茶の間、仏間、と周り、三人は最後に一番奥に位置する部屋に突き当たった。予想以上に何もないことに落胆していた彼らは、半ば義務的に部屋を確認して帰ろうとした。
「えっ?」
部屋を開けた友人の一人が間の抜けた声を出した。声につられて、友人の肩越しに部屋を覗いた省吾さんともう一人も同じような声を出した。畳張りの部屋の中央には大きな岩が鎮座していた。九畳程度の部屋をほとんど埋め尽くす大きな岩である。長い年月で床が抜けてないのを不思議に感じた。呆気にとられたが、特に恐怖は感じなかった。
帰り路では例の岩のことで大いに盛り上がった。どこから入れたのかとか、何の目的で置いているのかとか、憶測を話し合った。廃屋から離れてしばらく、二十分ほどしたころだった。友人の一人が突然、
「痛い、痛い!腕が、肩が痛い!」
と叫び始めた。車を止めてどうしたのか聞くも、足が痛い、腕が痛いと叫ぶばか りで埒があかない。自分たちではどうしようもないと悟り、すぐに救急車を呼んだ。搬送先の病院で、友人は肩と肘、膝と股関節の四ヵ所を脱臼していたことが分かった。三人とも例の廃屋に関係しているとしか思えなかった。
後日、退院した友人と省吾さんたちはお祓いへ行った。それ以降、おかしなことは起こっていないそうだ。

