誰
私と可奈は大学の同じサークルに所属していた。
学部は違ったが出身地と住んでいるアパートが同じだったとこから、すぐに打 ち解けた。互いの部屋で遊ぶこともしばしばだった。
二年生に上がってすぐ、五月初旬のこと、可奈は一ヵ月ほど学校を休んだ。サー クルにも顔を出さず、部屋を訪ねても返事はなかった。やがて翌六月、可奈が自 主退学したことを知った。私を含め誰も事情は分からなかった。私も突然のこと にショックを受けたが、数ヵ月すると自然と可奈のことを忘れていった。
ところが可奈が退学して数カ月たったある日、某SNS に可奈のものと思われ るアカウントを見つけた。半年以上前にフォロー申請されていた。通知に気付か ず見逃していたらしい。二〇一七年の四月、入学したのと同時期に作成されている。好奇心から投稿をさかのぼってみたが、授業やサークルに関する特に変哲の無い内容ばかりだった。しかし可奈が学校に来なくなる前の投稿にこんな一文を見つけた。
『食材の減りが速いと思ってたけど、同居人がつまみ食いしてたっぽい。』
この投稿にでてくる“同居人” とはいったい誰だろうか。可奈が学校を休み始める直前まで私は可奈の部屋に頻繁に出入りしていたが、誰かと同居しているよ うな雰囲気はなかった。それに私たちの住むアパートは、一人暮らしの学生向け ワンルームで、二人で住むにはいささか狭すぎる。さらに読み込むと、可奈の投 稿に同居人が表れ始めたのは、二年生に上がってからだった。
『同居人のおかげでホラー好きになってきたwww あの子の怪談マジ怖すぎ』
これが同居人が初めて登場したときの投稿文だった。そういえば、春休み明け に可奈と会ったとき、いくつか怖い話を聞かされたことがあった。可奈も私もホ ラーは好きではなかったのに、と不思議に思ったのをよく覚えている。特に可奈 は私よりも怖がりで、心霊番組の予告が映っただけでひどく嫌がりテレビを消し てしまうほどだった。
その後の投稿にも同居人と、同居人から聞いたと言う怪談が頻繁に出てきた。 やがて投稿は
『最近冷蔵庫入れても肉が腐る』
『郵便受けから人が覗いてる』
『お風呂に知らない人がいるからシャワーしか使えない』
というような内容に変わっていった。私はここまで読んで、可奈は精神的な病 気になりそれが原因で退学したのではないだろうか、そう思った。私たちと普通 に接している間もこんな支離滅裂な投稿をしていたのだと思うと、少し複雑な気 持ちになった。最後の投稿は五月だった。
『あれだれ』
この投稿を最後に、可奈はSNS 自体にログインしなくなっていた。私はなぜ かこの文章を見た後から背筋に悪寒が走り、鳥肌が止まらなくなった。郵便受け からはカタカタと音が鳴り、誰かの視線を感じる。 確認はしない。きっと気のせいだ

