オンライン面接
近年流行っている新型肺炎は学生の就職活動にも大きな影響を与えている。現在大学四年生の優香さんも、面接の半分以上をネットを通して行った。これは優香さんが面接をしたある一社での体験談だ。
そこは不動産を扱う地方企業で、優香さんは営業職としてエントリーしていた。 人事の対応も良く、福利厚生もしっかりしているようだったため、とても魅力的に 感じたそうだ。筆記と一次面接を無事通過し、最終面接でのことである。十分ほど 早めに面接ページにログインし、相手が面接を開始するのを待っていると、パッと画 面が明るくなった。もう開始したのかと思い顔を上げると、赤いカーディガンを着た女性が画面前に座っており、背後には白い壁が映っていた。慌てて優香さんが学校名 と面接の挨拶をするも、相手は無表情でただ座っているだけだった。何度か声をかけ ても微動だにしないためフリーズしたのかとも思ったが、背後に移った時計の針は動いている。どう対応すべきかと悩んでいると、女性の口が少し動いていることに気が付いた。顎は動いておらず、何かつぶやいているのかなと思ったそうだ。ためしに音量を最大にしてみると、小さな声が聞こえた。もっとよく聞こうとパソコンに顔を近づ けたとき、優香さんのすぐ近く、真後ろから囁くように
「疲れた。」
という小さな声が聞こえた。
驚いて振り返ったが、部屋の中には彼女以外誰もいない。啞然としてパソコンに向き直ると、始まった時と同じように唐突に画面が暗くなった。かと思うと、またすぐに明るくなり、先ほどと同じ部屋が映し出された。しかし画面の前に座っているの は赤いカーディガンの女性ではなく、白いシャツを来た男性社員だった。どうやら相手は少し前から接続していたようで、優香さんが時間を過ぎてもログインしないこと を心配していた。優香さんは今まで他の女性が画面映っていたと言ったのだが、上手 く伝わらず、ネット回線の問題だと思われてしまった。
その後の面接は上の空でさんざんな結果となってしまったが、驚くことに後日内定通知が届いた。しかし面接後に女性のことが気になって企業について調べると、過去に社員の一人が自ら命を絶つ事件があったことを知った。直接の関連性が見られなかったことや、社名が変わっていたことから気が付かなかったが、どうも同一の企業であ るようだった。優香さんは内定を辞退し、後に元々希望していた業界で内定を得る ことができた。
今では赤いカーディガンの女性に感謝していると言う。

